- 融資判断の重視ポイントのズレ
金融機関は「財務内容」と「事業の安定性・成長性」を最重視。一方、中小企業側も同要素を重視しつつ、「返済実績」「営業力・取引先との関係」なども重視しており、金融機関は「経営者の資質や資産余力」を特に評価している。 - 融資手法の変化とニーズの高まり
中小企業の現在の利用形態は代表者保証付き融資が最多で、次いで信用保証付き融資、不動産担保融資。一方、今後は「信用保証付き融資」に加え、「事業性評価に基づく担保保証不要融資」へのニーズが強まっている。 - 金融機関の方針転換
現在は信用保証付き融資が主流だが、今後は「事業性評価に基づく担保保証不要融資」に重点を置く方針の金融機関が増えている。これは中小企業の期待とも整合しており、今後両者の認識ギャップが縮まる見込み。
融資拒否の理由と問題点
- 投資計画の融資相談で拒否された企業は約15.8%。
- その理由の主因は「既存事業の収支悪化(56.7%)」「既存借入の過多(42.3%)」であり、「新事業の採算性」が原因のケースは12.3%にとどまる。
- よって、金融機関は新規投資の内容よりも既存事業の健全性を重視している。
経営者保証への取り組み
- 売上20億未満の企業の8割超が経営者保証を提供。一方で、将来的に提供を希望しない企業が約50%以上と、乖離が見られる。
- 経営者保証には規律・信用補完の効果がある一方、「思い切った経営の妨げ」となる側面もある。
- 2014年2月から「経営者保証に関するガイドライン」が適用開始され、保証の制限・生活財産保護・保証債務免除を求める制度が整備された。
貸出判断力強化の取組と効果
- 金融機関では、「財務分析教育」がほぼ全ての業態で実施。「経営内容把握教育」、外部専門家との連携なども広く取り組まれている。
- 特に「事業性評価融資」に力を入れる機関では外部専門家との連携が顕著であり、効果として既存・新規取引先の拡大に寄与している。
総まとめ
- 中小企業と金融機関双方で、担保・保証に頼らない「事業性評価融資」への期待が高まっている。
- ガイドライン整備により経営者保証の見直しも進行中。
- 貸出判断力を高める教育や外部連携などの実践が、実際に資金支援の拡充につながっている。
- 成功事例では「他者評価の取得」「情報公開」「専門家活用」が共通するキーファクターとなっている。
(出典)平成28年版 中小企業白書 第2部・第2‑5‑2‑3節「3 事業性評価の必要性」